Friday, March 16, 2007

「いじめ防止プロジェクト」バディガイダンス

2月23日をもって、4週間という長期間にわたる「いじめ防止」のワークショップを無事終了いたしました。
生徒たちの間に、「自らいじめをなくすために行動を起そう!」という気運が芽生えはじめた手ごたえが感じられ、本当によかったと思っています。

引き続き、3月14日にはバディ希望者へのガイダンスを行いました。15名くらい集まれば活動ができるだろうという私や先生方の予想をはるかに超え、40名の生徒が手を挙げてくれたのには大変な驚きでした。
はつらつとした自信を浮かべている生徒、これから何が始まるのかという不安の表情をしている生徒もいます。
しかし、どの生徒の顔からも一様に、やる気と強い意志を感じました。
これから始まる10時間のバディトレーニングやバディの活動が放課後になるので、部活の顧問の先生方に活動日の調整を願い出ている生徒も、塾の調整をしている生徒もいました。
参加者は、女子生徒が中心になるのかと想像していましたが、男子生徒が3割り超え、40人中39人が部活動をしており、比較的休みを取ることが難しいと思われる運動部員が男女とも多いことには驚きました。部活との日程のやりくりを覚悟した上での参加だと思われます。
 ガイダンスが終わり、他の生徒達が教室を出て行った後、車椅子に乗った一人の女子生徒が廊下で待っていて、「私は親の送り迎えが必要なのででられない日もあります。でも、バディになりたいので参加してもいいですか」と聞いてきたので「期待しているよ」と答えました。アンケートに、「障害を持っていることで、からかわれたり仲間はずれにされたりすることがある」と書いていた生徒です。バディの中にこのような生徒が入ることによって、きっと他の生徒も多くの学びがあるだろうと思います。

ガイダンスでは、バディはあくまで生徒の自主的な活動であること、受身の活動ではなくバディが積極的に情報発信をしつづけ、広報、イベントなどを企画していって欲しいことなど希望も伝えました。生徒たちは早速、活動するための教室の候補を挙げたり、メッセージを他の生徒たちに伝える広報手段を考えるなど積極的に意見を出してくれました。これから10回の研修で彼らがどこまで知識やスキルを吸収し、成長するかが楽しみです。

このような、生徒たちのパワーに負けじと3月15日からは、教員向けの研修も始まりました。この研修は生徒と先生が認識、情報やスキルを共有しておくことがコミュニケーションには不可欠であるという考えで実施しています。初回の研修では、生徒たちに実施したワークショップの構造や目標などを解説し、生徒たちの潜在的な力と更なるエンパワーメントについて大人たちがどのように関わることが大切かを話しました。2回目の研修のテーマは「いじめの早期発見と介入」、3回目は「スクールバディの運用と常設化」とし、先生にスーパーバイザーとして役割を果たしていただくための研修を行う予定です。

バディ候補者が40名集まったことを報告したとき、校長先生は興奮気味に、「すばらしい!それはすごい!」と第一声をあげられました。こうして、校長先生、教頭先生、先生方が一丸となってバックアップしてくださってはじめてこのプロジェクトが成り立つのです。4月には新1年生が200名入学してきます。学校では1年生にもいじめ防止ワークショップを実施し、全学年が受講できるよう毎年実施していく予定だそうです。学校側の協力に本当に感謝しています。

Sunday, March 04, 2007

「いじめ防止プロジェクト」 まとめ

子どもたちは、回を重ねるごとに確実に興味と感心を持っていったようです。
それは、普段あまり話し合われない「いじめ」や「心の傷」というテーマが安全、安心を前提としたルールのもとで自由に発想、表現され、またそれが尊重されるという雰囲気の中で進んだことが、現実に向き合っていくという子どもたちの力を引き出したことと感じました。
この点でファシリテーターがプログラムを構築する際に苦心したのは、彼らの真実を見極めるにはファシリテーターが信頼関係を築き、明るくワークショップを進め、個人個人の本音をどれだけ引きだすことができるかであり、クラス全体で方向性を見出せるかというプログラムの仕組み作りだった。そのために、宿題というかたちで個人が一人で取り組んだワークを、再度5~6人のグループで話しあい、グループで取り組んだワークを再び個人が持ち帰り、もう一度考えるワークを何回か重ね、最終的にクラス全体で共有していくという形にしました。

外部講師であるファシリテーターがこの年頃の子どもたちに感心のあるテーマであるカウンセリング等、心理学的雰囲気を持たせた講座を行ったことも効果的でした。
しかし、宿題を読む限り、彼らの中には元から痛みがあり、どうにかしたいという気持ちも下地として持っていたし、書いてあることは、一部、講師や先生方へのサービスもある事はわかりますが、ほとんどの子どもたちがいじめに対して「NO!」という意見を書いてくれた。これは彼らの真実であると思います。
子どもたちの心の変化は段階を経て変化していきました。
最初はいじめはあるものだという冷めた考えも多く感じられましたが、2回目、3回目には自分達にも何かできるかもしれない、そう思うのは自分一人ではなく、同じ考えをもっている仲間がいて、一緒に活動することで何かを変えられるかもしれないと、徐々に希望をもった意見が多くなっていきました。希望と現実とのギャップが正に彼らの悩みであることから、ギャップを減らすことに努力しました。それは、第4週目に予想をはるかにこえる生徒がSchool Buddyに参加を表明してくれたことで報われました。

子どもたちと接して感じたことは、彼らはいじめについてしっかりとした考えを皆もっていた。全員が何らかの形でいじめに関わっていて、被害者として、加害者として、そして多くが傍観として、全員がつらい思いを抱えていました。4回連続のワークショップは一方的な情報提供ではなく、一週間かけ、生徒自身も生徒同士でも考え、家庭でも家族と話し合う時間的余裕もあったことが、彼らの力を段階的に引き上げ、大きな気づきと力を引き出す結果につながったと思います。

最近小学校を中心に行われるようになった子どもの人権ワークショップのように、一回だけ、もしくは一方的なプレゼンテーションで与えられる知識とは違い、個人個人が、またグループ自らが考える場面を繰り返し設け、引き出された力や思いを4回のワークショップ後も学校内にいじめ防止システムを残すところまでがプログラムであり、システム構築、School Buddy育成や運営までも生徒、先生方と専門家が長く関わることがこのプログラムの特徴です。
いじめの加害者である子ども、また被害者である子どもも回を重ねていく中で徐々に警戒心を解き、初回まったく参加できなかった子どもが、最後の回にはロールプレイに積極的に手を上げ参加できるようになったクラスもあり、何よりも生徒たちの中からSchool Buddyに参加したいという子どもたちが多く出てきたことはファシリテーターとして大きな喜びでした。

■今後の予定
3月9日の卒業式後にSchool Buddyを正式に募集し、春休み前には活動説明会を実施し、できるだけ早い段階「Buddyトレーニング」を開始したいと考えます。 また、3月15日には先生方職員向けの研修も始め、生徒たちと情報共有を図りたいと思います。3月23日に行われる就業式前に全クラスで考えてもらっている、いじめをなくすための生徒自身のメッセージ(ポスター、標語、漫画、俳句、川柳、劇、歌など)の発表が楽しみです。       

 2007年2月23日
 湘南DVサポートセンター
 END VIOLENCEいじめ防止プログラム
 代表 瀧田信之

「いじめ防止プロジェクト」の4回目のご報告です。

 4回目のワークショップ(2月19日~2月23日)

■いよいよ、最後のワークショップですので、まとめとしての振り返りと、アサーティブに生きることの大切さをチェックインに取り入れ、体験しもらいました。
ワークは満員電車での出来事を再現し、アサーティブに自分の気持ちを他人に伝えることが大切であり、いじめの問題にも通ずることもあるので、このスキルを身に付けると生きやすくなることを伝えました。ワークショップ冒頭に行うチェックインとしてのワークは毎回、生徒には人気があり、盛り上がります。やはり、ワークショップといっても体を動かし表現する参加型、体験型に人気があります。
パッシブ(消極的に相手を受け入ながら)に生きるか、アグレッシブ(積極的に、自分の言い分を押し通しながら)生きるか、それともアサーティブ(相手の気持ちも受け入れながら、自分も主張する)に生きるかによって生き方が変わることを伝えました。満員電車ワークは中学生にはわかり易いものだったようです。

「いじめ防止プロジェクト」の3回目のご報告です。

3回目のワークショップ(2月13日~2月16日)

■第3週目
2週目は生徒たちに「自尊心」という言葉を示し、自分を大切にすることの大切さを伝えて終っていたので、3週目の出だしは自分が安心できる場を確保する大切さ、また安心できる領域やその広さと他人の領域とをしっかり見極め、人の安全を犯さないというワークを行いました。他人の侵略に「NO!」といえることの大切さを伝えました。生徒が想像する、安心できる場所は家、自分の部屋、祖母の家、布団の中、風呂の中、友達の家、草原、海と様々でした。
一週目に出した宿題から、彼らの多くが一度は加害者、被害者、傍観者といういじめの構図の中に自分の身を置いた経験があると書いていたことから、その暴力の輪に入っていた自分をどうしたら解放できるか、身近にあるいじめを減らすには自分は何ができるかをそれぞれ個々に書いてもらい、内数人に発表してもらいました。この作業は全員に宿題として持ち帰って完成してもらいました。

■いじめを減らす、なくすには一人一人に何ができるかという課題には、いじめは勇気をもって止める、人の気持ちを思いやる、いじめられている子がいたら話を聴いてあげる、いじめが悪いという雰囲気をつくるとあくまで、他人が被害者であることが前提になっているような答えが多くみられました。自分がいじめにあったらという観点からは、「友だちに相談する」「親に相談する」が多く、先生に相談するという生徒は少なかったようです。

■忍耐強く回を重ねていくと、最初は何も話を聴かず、無視するようなそぶりの数人の生徒も徐々に話を聴くようになり、ワークショップにも少しずつ参加するようになりました。ザワザワと私語に耽る子も、うつむいたまま耳をふさいでいるような子も、今いじめを実際行っている加害者も「いじめ」という言葉の辛い響きは届いているようでした。
新聞やテレビでは学者や評論家たちが、いじめは嵐だから通り過ぎるのを待とう!という発言をしていますが、いじめは通り過ぎるかもしれないが、いじめによって受けた心の傷は消えないことを伝えました。生徒たちには傷つく前に止める、傷ついてしまったら心のケアをしようと呼びかけています。それができるのは生徒自身であり、生徒同士が支えることで、学校からいじめを締め出すことができると伝えています。3週目のワークショップの終わりには、各クラスにchool Buddyのシステムと必要性について説明をはじめましたが、早々に希望者が出ていました。